地域の魅力徹底研究セミナー

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  日本文化体験交流塾「国際人のための江戸・東京文化講座」

   第7回報告
       田中 実穂さん


   「江戸の胃袋、100万人の食の秘密」

 過去講座好評掲載中
* 第1回講座報告:桐谷エリザベス氏
* 第2回講座報告:安藤優一郎氏
* 第3回講座報告:富士松松栄太夫氏
* 第4回講座報告:安藤優一郎氏

* 第5回講座報告:富士松松栄太夫氏
第6回講座報告:小山周子氏
*第7回講座報告:田中実穂氏
第8回講座報告:安藤優一郎氏

第7回講座の要約が届きましたので、掲載いたします。今回は「東方時報」の遠藤 英湖氏の協力による要約となっております。どうかお楽しみください。

 

江戸時代の人々の“食”とは
外国人に東京の魅力を伝えるため講座開催

近年、江戸時代への関心が高まっているが、当時の人々はどのような食べ物を好み、どのような食生活を送っていたのだろうか。このたび、日本文化体験交流塾主催による「国際人のための江戸・東京文化講座」のひとつとして、「江戸の胃袋、100万人の食の秘密」の講座が行われた。講師は東京都歴史文化財団の田中実穂氏。

江戸時代とは264年間続いた日本の歴史の時代区分のひとつで、1603年に徳川家康により江戸(現在の東京)に幕府が開かれた時から、1867年に15代将軍・徳川慶喜が政権を返上(大政奉還)するまでの時代を指す。18世紀初頭には江戸の人口は100万人に達し、日本最大の消費都市かつ世界最大の都市に発展した。

しかし、このような江戸も初期は食べるので精一杯。食事を楽しむ余裕などなく、一日二食の時代だった。その後、道路や水道などインフラが整い、江戸中期になると食事を楽しむ余裕が生まれ、一日3回の食事が庶民にも定着したという。

田中氏によると、当時、江戸城(現在の皇居東御苑)からは魚釣りを眺められるほど海が近かった。東京湾では海老、イワシ、スズキ、穴子、海苔などが獲れ、魚は日本橋の魚河岸から仕入れていた。

現在の日本人にとって魚といえばマグロだが、江戸時代にはマグロは「下品(かほん)の魚」といわれ、安く、人気がなかった。特に、現在高級なマグロのトロは脂身が嗜好に合わなかったという。当時、人をもてなすときの刺身はタイなどの白身魚が主だった。

江戸時代、魚の中で人気が最も高かったのはカツオ。初物を食べると寿命が75日延びるとされ(「初物75日」)、「勝男(かつお)」の語呂に通じるとして、縁起のよいカツオを人に先駆けて食べる「初ガツオ」への江戸っ子の執着はすごかったという。「女房を質に置いても」という言葉があるほどで、カツオの争奪戦が繰り広げられた。現在カツオはたたきにして食べるが、江戸時代は刺身として食べることが多く、大根おろしと醤油で食べていた。

田中画像

またカツオを煮てから煙でいぶし、青かびを使って硬く乾燥させた「かつお節」も江戸の食生活から切り離せなかった。背干しと腹干しがあり、腹干しは脂が少し多く、蕎麦のダシにすると濃くて美味しく、現代の日本でもよく使われている。カビをつける回数によって、かつお節の等級が変わってくるとのことで、最高級のものは5回かびをつけ、つくるのに半年かかるそうだ。江戸時代、庶民はかつお節まるごと1本は高くて買えなかったので、乾物屋に行き、少しずつ削ってもらって買っていた。

現在の和食は江戸時代につくられたという。田中氏によると、江戸時代後半の献立のカタログにはきんぴらごぼう、野菜の和え物、煮物、漬物など現在の日本でも食べているようなものが数多く載っている。しかし、現在では昭和30年代頃より、ドレッシングをかけたサラダなども食べるようになったが、江戸時代は生で野菜を食べる発想はなかったという。江戸時代は、野菜についていえば、根菜類は多摩などから、葉物野菜は葛西方面(江戸川、江東、荒川など)から調達していた。

今はスーパーマーケットなどで買い物をするが、冷蔵庫もない江戸時代には、納豆、豆腐、魚、惣菜など町中を歩きながら売りに来ていて、皆その日に食べる分だけ買い、無駄がなかったそうだ。

江戸時代には屋台も発達。今も日本食の代表として人気がある「天ぷら」は江戸時代に発明されたファーストフード的な食べ物で、屋台で食べるものだった。蕎麦も当初「蕎麦がき」(蕎麦粉を熱湯でこねて、団子状にした食べ物)のようにして食べていたが、1700年代末から細く切って食べ始め、その屋台は江戸に4000以上あったという。

また、既に町としてのシステムができあがっていた関西では「うす味」の食文化が発達したのに対し、町づくりと、火事が多くて建物の再建設が必要だった江戸では、汗をかく肉体労働者が多く、塩分の多い「濃い味」の食文化が形成された。

講座ではこの他、江戸時代のリサイクルなどについても触れられた。

「国際人のための江戸・東京文化講座」は外国から訪れる人々に、美術、芸能、食、暮らし方等、江戸時代以来400年の歴史を持つ文化都市・東京の本当の魅力を理解してもらえるよう、通訳案内士をはじめ、江戸・東京の文化に関心のある人が正しい知識を身につけることを目的に開催されている。(遠藤英湖)

(要約:「東方時報」 遠藤 英湖氏)



遠藤さん、ありがとうございました。なお、今回の講座の模様は6月26日付けの「東方時報」紙面にも掲載されました。興味のある方はこちらからご覧ください。


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