「通訳案内士」は報酬を得て通訳案内業をすることができる資格になります。
しかしまだ認知度が低く、仕事として成り立っていないというのが現状です。
昔は外国語を話すことの出来る人が少なかったのですが、現在は英語をはじめ、外国語を話せる人が増えてきています。もちろん資格を持たずに通訳案内業をしてしまうことは法律違反で罰金となりますが、このような時代背景も一つの要因だと思います。
しかし、この通訳案内業による法律もようやくきちんと整備され、それまで多かった「無資格ガイド」への規制が強まりました。観光に携わる方々の通訳案内士に対する認識もようやく高くなってきたところで、少しずつではありますが「通訳案内士」の地位が確立されてきているところだと思います。
また、外国人旅行者が増える中、国が通訳案内士を増やそうと、通訳案内士試験の緩和が実施されました。
2005年の試験で実施され2006年にはそれまで数パーセントだった合格率が一気に十数パーセントに引きあがりました。しかし、実際増えた通訳案内士のほとんどが英語のガイドで、現在旅行者の多い韓国や中国などアジア圏の言語を使用できる通訳案内士は少ない状況です。
さらに通訳案内士の試験は海外でも開催されています。しかし、一つ疑問に思うのは、海外に住んでいる方が実際に日本の文化や歴史をどの程度理解しているのか?そして、正しい日本の姿を伝えることができるのか?ということです。
そして、もう一つ別の法律ができました。それは「地域限定通訳案内士」です。この資格は「通訳案内士」が全国で通訳案内業をできることに対し、「地域限定通訳案内士」は合格した地域の中で通訳案内業ができるというものです。つまりその地域を越えた業務はできないことになります。通訳案内士でさえ、仕事がまだ確立されていない状況で、その範囲がさらに狭くなってしまうということは非常に大変なことで、『仕事』としてやっていくには難しいと思います。
また、ボランティアガイドと地域限定通訳案内士との違いもどのように捉えるのか難しいということもあります。
特に自治体ではボランティアガイドは地域の人材育成の一つにもなりますし、高齢化社会に対する退職者への対策にもなり、地域の活性化に役立っています。今はまだ地域限定通訳案内士の方も頻繁に仕事があるわけではなく、ボランティアとして活動している方もいらっしゃるようですが、地域限定通訳案内士とボランティアガイドとの関係は今後気になるところです。
さらには地域限定通訳案内士と通訳案内士との違いに関しても、特定の地域だけ案内できる地域限定通訳案内士は、その土地のみで雇うことができるため、エージェントとしてはとても便利ですが、ツアーを一貫して案内できるということと長時間の移動中にもガイディングができるということでは通訳案内士の方が適しているという点があります。
特に通訳案内士の仕事として日本の文化や歴史、生活など特定の地域の話より日本の一般的な話をすることで、日本を紹介するという役割があります。また、国の政策で通訳案内士を増やしていますが、通訳案内業は「経験」が大切です。
このような通訳案内士の仕事は「経験」が物を言うため、新しい通訳案内士にはなかなか仕事がまわってこないという現状もあります。
では実際に通訳案内士として求められるものはいったいどのようなことでしょうか?
・「健康」であること →ガイドは体が資本
・「笑顔」を絶やさない →接客業としての基本
・ホスピタリティー →お客様本位で接する
・知識の豊富さ
・自分らしさ(個性)
まだ、通訳案内士の仕事は安定したものではありませんが、これからの観光にはガイドの存在は欠かせません。外国人旅行者にもっと日本を好きになってもらえるよう、よりサービスの質を高めるとともに、平和な国日本で「観光」の仕事ができるということに誇りを持って取り組んでいきたいと思います。
取材・文章:村山、加瀬、寺本、ジョン
写真:日本文化体験交流塾